銀盤の舞-フィギュアスケートエトセトラ-

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鈴木明子選手-失う物が何もなかったシーズンからの飛躍-

真っ黒のコスチュームに、憎い程さり気なくも大胆に顔を覗かせる、情熱の赤。

溢れんばかりの大きなその黒い瞳は、時に、無邪気に笑い掛け、時に、その無限大の熱い魂に、見ている者の心を吸い込むかのような、情熱の色気…。

【失う物は、何もないので…】

競技後のインタビューに、上位選手に比べたら、今までの実績からみても、あまりプレッシャーなく滑ることが出来る という意味からか、思わずこぼれ出た「本音」。

鈴木明子選手

失う物は何もないので…。面白い選手だと思いました。正直な選手だと思いました。

プライド…誰しも、大なり小なり持っているものですが、その「プライド」との付き合い方(向き合い方)が、上手な選手なのだろうと。

2008〜2009年シーズンから、少しずつではあるけれど、上位への階段を、ゆっくりゆっくりあがりはじめて、魅せたエキシビション(EX)ナンバーが、

リベルタンゴ】(作曲:アストル・ピアソラ)

※「自由」Libertad と 「タンゴ」tango とを合わせて作った造語(by Wikipedia)

「アッコなら、絶対タンゴが似合うはず!」と、高橋大輔選手が、タンゴを滑ることを勧めた話は、ファンの間では、ご存知のことでしょう。

正直に言います。

それで、注目するようになりました、鈴木明子選手に…。

高橋大輔選手の「ロクサーヌ

(映画:ムーランルージュより/振付け:ニコライ・モロゾフ/2005〜2006シーズンのSP曲)

このタンゴ部分の旋律が、私の心を激しく揺さ振り、大輔選手が持っている「色気」を、じわりじわりと浸透させてくる、実に巧いナンバーだと、思うのです。

リベルタンゴ】…フィギュアスケートを知らなくても、誰しも一度は耳にしたことがある、この曲。

心の奥底に潜んでいる、欲望、孤独、情熱、愛…。

鈴木明子選手は、普段は派手さがある選手とは言えないけれど、タンゴを演じてる様を見るなり、「いい意味で裏切られた」、そう感じたのです。

あの黒い大きな瞳が、ググッ!と、心を鷲掴みにする、その瞬間

「情熱の色気」が、体中を包み込む。

鈴木選手が演じると、嫌らしくない けれど、「無限大」の可能性を感じる、その色気。

ファンの間では、心に残るプログラムのひとつとなっている、リベルタンゴ

【失う物は、何もないので…。】

そう語っていた鈴木明子選手も、少しずつ感じ始めたプレッシャーと闘いながら、バンクーバー五輪では8位入賞、世界選手権では、フリーで巻き返して堂々11位 と、大健闘。

世界最高記録には程遠い…表彰台にも、あともう少し。

ですが、初出場の五輪で、「ウエストサイドストーリー」(フリー)を、沸き上がる感動と共に観客を魅了したステップで、見事自己ベストをたたき出し、溢れる感謝とこれ以上ない嬉しさと楽しさが、揺れ動く初めて経験する大きなプレッシャーを、精一杯閉じ込めたその演技に、ブラウン管を通して、鈴木明子選手の「魂」を感じた気がして、私もこぼれ落ちる涙を、抑えることは出来ませんでした。

一緒に、泣きました。

摂食障害を克服し…」 同じ病で苦しんでいる人達を、鈴木選手は充分勇気っけたことでしょう。

2010〜2011年シーズンは、マスコミの方も、その「冠」をそろそろ外してはもらえないでしょうか?

(ご本人も、だいぶ前のことだし、そこだけを見ないで…と、語っていた記事もあり…)

着々と階段を上がっている鈴木明子選手。

失う物が何もなかったシーズンから、少しずつではあるけれど、確実にステップを踏みはじめています。

競技の後、キス&クライにくる手前で、必ずリンクに感謝のお辞儀をし、深い信頼に包まれた長久保コーチを、心底尊敬慕う、その姿を、願わくば、もうしばらく見せて欲しい。

ファンのワガママかも知れないけれど…。