銀盤の舞-フィギュアスケートエトセトラ-

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もう1人のスロースターター — 小塚崇彦 —

「勝ったから、いいんです。勝てば、何でもいいんです。…ねっ!」

ジャパンオープンが終わった直後の、4人が揃ってる選手席でのインタビューにおける、小塚崇彦の言葉。

既にご承知の通り、今回は浅田真央選手のジャンプが不調に終わった。が、目下、ジャンプを修正中の浅田選手にとって、ある意味仕方のないことなのだが、エキシビマッチともいえるジャパンオープンであっても、人一倍負けん気の強い浅田選手にとっては、チーム対抗で争う競技会、それは相当悔しかったのではないかな…一足遅れて全国放送されたBSジャパンを見ながら、私はそう感じた。

「…ホントにすみません…足を引っ張ってしまって…ごめんなさい。」「ダメです。(点数)期待しないでください…。」

何度も謝る浅田選手。

その様子を見ていて、ひとつだけ救われたのが、小塚崇彦選手が最後に発した言葉だった。

「勝ったから、いいんです。勝てば、何でもいいんです。…ねっ!」

今季から、浅田選手も佐藤ファミリーに仲間入りしたので、小塚選手と同じ門下生という思いから出た思いやりの言葉だったかも知れない。

けれど、小塚選手の演技を見終わって感じたのは、確実に昨季よりも「進歩」してきており、かつ、人間性も大きくなってきているんじゃないかな…と、いうことだった。

高橋大輔選手の演技が終わった直後、選手席が映った。すかさず、小塚選手は立ち上がり、隣に座っている安藤選手と浅田選手に、立ち上がるよう、ジェスチャーで示していた。

大輔選手は今のところ、来年の世界選手権以降の競技生活を続けるか、意思表示をしていない。場合によっては、今季で見納め…その確率は低くはないようだし、バンクーバー五輪の頃から、メディアに「次のホープ」だと、自ら小塚選手を紹介していることから、小塚選手も、少しずつ「自覚」してきているのではないかと思う。

今季は、表現力に磨きをかけたい…そう語っている小塚選手の演技は、明らかに昨季よりも洗練されてきている…私の目には、そう映った。

ノンフィクションライターの田村明子さんの著者に、「フィギュアスケートは、人格が表れるスポーツ」だという表現がある。

…なるほど、そうかも知れない。

浅田真央選手は、天才的スケーターだが、決して器用なタイプではないと、私は感じる。だからこそ、たくさんの人が彼女に惹かれるんだと思う。

小塚崇彦選手も、器用なタイプではないようだ。だから、「遅咲き」かも知れない。けれど、少しずつでも「進歩」しているジャパンオープンでの彼を見て、「いいじゃないか、小塚くん。」と、光を感じた気がしたのは、私だけなのだろうか、、。

誠実な人柄…彼のスケーティングを見ていると、そんな気がして仕方がない。