世界選手権モスクワ大会回想 — 成功と実りある失敗 —
震災で開催が危ぶまれたフィギュアスケートの世界選手権も、“無事に”幕を閉じた。
震災直後、サッカー界は募金活動等、支援への動きが確かに素早かったと、私も感じていた。また、宮城県東北高校出身のゴルファーが少なくない女子プロゴルフ界も、やはり支援の動きが早かった。
それからみたら、男子プロゴルフ界は動きが遅く、しびれをきらした「ジャンボ尾崎」が、自ら街頭に出て募金活動を行い、石川遼等にハッパをかける恰好となった。
「プレーで元気づけるなんてのは、もっと先の話だ!今は、とにかく支援が必要」
確かにその通りだ。震災から1ヶ月の間は、正直音楽もスポーツも何も気が向かないのだ。
音楽好きな私ですら、聴こうという気になったのは、震災から1ヶ月過ぎてからだった。
私の好きなフィギュアスケート界は何をしている!
世界選手権開催がどうなるか分からない中、選手や関係者は人様を気遣ってる場合じゃない・・・それは承知していたが、サッカー界やゴルフ界、陸上の選手達、ラグビー界等、プロだけでなく、アマチュア競技界も支援の動きを見せていた中、何も“音沙汰”がないフィギュアスケート界に、正直気持ちが遠退いていた。
そんな時に、私は思わず高橋大輔のホームページにコメントを送った。
「世界選手権を観戦に行く予定でしたが、行けなくなりました・・・引退するかも知れない中、直接応援が出来ず残念です。ご活躍お祈りしています。」
端折ればこのような内容だ。
それから、1週間もなかった。高橋大輔発案のチャリティーショーの話題が飛び込んできたのは。偶然のタイミングに驚いた。
安藤美姫がそれより早くに、チャリティーショーに参加していたことは、だいぶ後に知ることとなった。
メディアは、特にテレビ界や新聞業界は、影響力が物凄く大きい。何故、そういう良い話題を大きく扱ってくれないのか?
インターネットだけの情報では、インターネットを扱えない人々の耳にまでは、全く届かない。
キム・ヨナが、今大会の賞金を東日本大震災に寄付する話は、大きく報道された。演技内容と得点はさておき、それはそれとして私の母が思わず、「ミキティも寄付すればいいのに」と呟いた。
すかさず反論した。
既にチャリティーショーをやっていたことを。
それだけではない。安藤美姫は、演技中も終了後も、被災地に向けてメッセージを発信している。
キム・ヨナは、ユニセフ親善大使をつとめている。私から言わせてもらえば、ヨナこそ、もう少し早くにメッセージを発信しても良かっただろうに。そう感じている。
母世代(60代)は、インターネットなど知らない。
情報源はテレビや新聞だ。
些細な話題かも知れないが、大事な話題。結果としては人気を増やすことにも繋がる。メディアは、その影響力を今一度再認識していただきたい。
前置きが長くなってしまった。
安藤美姫の舞に、癒され元気をもらった私は、ようやくフィギュアスケートにまた向き合う気持ちになったのだ。
色々あった今大会・・。
だが、
観戦し続けて本当に良かったと思っている。何故なら、大きく成長した安藤美姫に出会えたからだ。
安藤美姫:社会の右も左も分からない10代の頃から、メディアにはアイドル扱いされ、パパラッチのように追い掛け回され、トリノ五輪の惨敗を機に、一気に手のひら返しを始めた一部のメディア。
人に振り回され傷付き、情緒不安定にもなっただろう・・・しかし、周囲の賛否はともかく、安藤にとって今は、ニコライ・モロゾフという最高のコーチに出会えたことが、安藤を大きく成長させたと言えるかも知れない。
母親に大反対されながらも、単身アメリカに渡りニコライに師事を受け、ソチ五輪に向け政府に呼び戻されたニコライは、ロシアに拠点をうつす。それに伴い、安藤もロシアに渡った。
英語や簡単なロシア語なら問題なく会話出来るようになったという安藤。
ニコライと安藤は、似た者同士な側面があるような気がしてならない。だから、安藤の精神的な浮き沈みも理解出来たのだと思う。
今大会では両手の指から指輪が見事に消え、やたらアモディオとベタついていたニコライが気になったが、震災の影響を一切感じさせない、いや、むしろ震災があったことを悲観するだけではなく、自分のパワーに変換させた安藤美姫は、素晴らしいと思う。
アンチ安藤美姫だった私は、今こうして素直に彼女を認めている。
安藤に手のひら返ししたであろう、一部のメディアは、きちんと責任をとるべきではないか。
それが、大人社会のマナーだ。
浅田真央:誰もが感じたであろう“激ヤセ”ぶり。それに加えて、ショートプログラムの奇妙なデザインのコスチューム。これ、本人が納得して着用していたんだろうか?あばら骨が見える程に痩せた浅田の身体が、余計に貧弱に見えて、いたたまれなかった。
安藤はメイクもコスチュームも、今季は見違える程“レディ”に変化した。ショートプログラムのコスチュームなんて、とてもセンスが良い。
誰か浅田真央のコスチュームをフォローしてくれたら・・・と、ついつい思ってしまう。せっかくメイクが品良く綺麗になっているのだから、勿体ない。
愛の夢 のパープルのコスチュームは、とてもセンスが良いが。
激ヤセしたことの理由に、「より良いジャンプが出来るようになるため、今大会に向けては、自分で食事法をコントロールしすぎた」とあった。
バンクーバー五輪直後に購入した本、「浅田真央 パワーアンドビューティー ミラクルボディの秘密がわかる!」(著者:ウィダー浅田真央 栄養&トレーニングサポート・プロジェクトチーム、発行:小学館)によると、チーム真央を結成し、トレーニングや栄養面で、献身的に浅田を支えている様子を知ることが出来た。
当然、それは今日まで継続されていると思っていたが、違ったらしい。今大会で浅田は「ウエイト(体重)がとても大事だ」と認識したため、再びチーム真央を結成するという。
バンクーバー五輪時は、48キロのベスト体重が、今大会では43キロにまで落ちてしまったらしい。私が身長150㎝ちょいだ。私のベスト体重より軽いなんて、痩せ過ぎもいいところ。
理由は他にもあったと思うが、少しの間フィギュアスケートから離れて頭をリフレッシュさせてあげたいと、老婆心ながら感じてしまった。
痛々しくて見ていられなかった。それでも「休養せずに」試合に出続けた浅田真央には、頭が下がる。
真央ちゃんはどうしちゃったの?って、思い出して欲しい。まだ“道半ば”であることを・・・。
村上佳菜子:ジャンピン・ジャックには、やはり白いコスチュームはマッチしない。プログラム全体がぼやけて見えてしまう。ピンクのドット柄があまりに幼児趣味だと評判悪かったため、世界に向けて「大人っぽさ」の村上佳菜子を披露したかったのかも知れないが・・・。
鈴木明子も、屋根の上のバイオリン弾きでは、白いコスチュームを着用していたが、本人の気持ちの問題やジャンプの不調があったものの、白いコスチュームが、氷上の鈴木明子を余計に目立たなくさせていたように感じていた。
曲とコスチュームの色は、大事だと思う。
村上佳菜子、ショートプログラムに比べたら、フリーはいい出来だった。若さと将来性を感じさせる内容だったと思う。これは必ず次に繋がるはず。
余計なお世話だが、私は前髪をあげたスタイルが大人な村上を演出していると思う。
キム・ヨナ:本当に、バンクーバー五輪で引退したかったのだろう。五輪直後の世界選手権(昨年のトリノ大会)の演技を一目見て、「参加したくなかったんだな」と、嫌という程感じていた。
この人は、負けん気強い部分は間違いなくあるだろうが、同じことを言うが、「あげひばり」の頃までは、好感も持てて本当に素晴らしい選手だと感じていたものだ。韓国という国に生まれたばっかりに、浅田真央以上のプレッシャーが浴びせられ続けてきたように思う。
強そうに見えるが、私には「強がっている」ようにしか見えない。本当は、弱い人だと思う。
ある意味、気の毒な選手だろう。
氷上での演技は、やはりブランクを感じさせる内容だった。が、上半身の使い方や表情(表現力)等は、五輪の時より鍛錬されている気がした。演技終了後、表情が一気に変わる。まさに、女優なのだ。
しかし、エキシビションは「大根役者」だった。あのエキシビションプログラムは、仏頂面で演技する内容ではない。機嫌が悪かったのだろうか・・・“2番じゃダメなんですか?!”と、言いたくなった。いや、アマチュア競技とは言え、高いお金を出して観客達は観戦している。
アマチュアながら「プロフェッショナルな意識」がないと、一流にはなれないはずだ。
エキシビションを放送時間リアルタイムに見ていたら、私は血圧が上がり倒れていたかも知れない(汗)。
※ 女子ショートプログラムが終わり、映像がフジテレビのスタジオに切り替わった途端、高島彩、荒川静香の2人の表情が、固まっていたのを見逃さなかった。高島彩の頭からは、クエスチョンマークがたくさん出ていたように見えた。そのクエスチョンマークをひたすらに荒川静香に向けていたようにすら感じた。
何とも言えない表情だった、2人とも・・・。
女子ショートプログラムの放送翌日、原因不明の腹痛と吐き気に襲われた私は、残す二日間の放送を、録画で見ざるを得なかった。
何だったのか、あの腹痛と吐き気は。
今は大丈夫だが、フィギュアスケート観戦も体力と気力が必要らしい(汗)。
次回に、続く・・。