銀盤の舞-フィギュアスケートエトセトラ-

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世界選手権モスクワ大会回想② — 成功と実りある失敗 —

今大会の放送では、ダイジェストながらも、ペアとアイスダンスも放送してくれた。それは、素直に有難く思う。

フィギュアスケートが、やっぱり好きだな・・・そう思う理由のひとつに、アイスダンスがある。

今回、「まるで、五輪の試合のようだ」と言っても過言ではない程、アイスダンスが面白かった。

マイヤ・シブタニ、アレックス・シブタニ組:お顔がよく似ている兄と妹の組み合わせだが、リンクで演技していると、兄妹とは思えない。とても品の良い演技をするが、そこには静かなる情熱さも感じられる。

ツイズルも息が合っていて、何よりスケーティングが滑らかで狂いがない。妹はまだ16歳だ。この歳でこんなにも雰囲気のある演技が出来るなんて、凄い。

世界選手権、初参加で銅メダルは素晴らしい快挙だ。

正統派な清純なイメージのある2人の演技だが、いい意味でどんどん裏切ってくれるような演技を、期待したいと思う。

メリル・デービスチャーリー・ホワイト組:今季負けなしの2人だが、やはり試合に出続けた成果は大きいと見える。バンクーバー五輪金メダリストのヴァーチュー・モイア組の得点を上回った。高速ツイズルは、見事だ。

チャーリーの髪型や顔立ちは好みではないが、演技をしていると何故か、色気を感じてくる。カッコいいと思う。それだけスケーティングスキルも素晴らしいということだろう。

シーズンベストで金メダル。(世界最高得点だったかな?)

テッサ・ヴァーチュー、スコット・モイア組:足の手術で、バンクーバー五輪以降試合を休んでいた2人。世界選手権前に確か1度試合に出ているが、フリーダンスの時だったと思うが、足に違和感を覚えたためか、途中棄権していた。

今回、大丈夫だろうか?と、心配したが、その必要はなかった。

ほぼ1年試合に出ていないブランクはあったかも知れないが、そんなことを感じさせない程、鍛錬されている。さすがだ。

プログラムに合わせて、髪型やメイクをガラッと変えてくるあたりは、ファッション性を感じる。

美男美女という表現が古いか知らないが、カッコいいし、美しい。ヴァーチューにウインクされたら、堪らない(笑)。

シーズンベストで銀メダル。

クリス・リードキャシー・リード組:コーチ変更と怪我で、色々あったシーズンだったと思うが、久しぶりに見た2人の演技は、ずいぶんと進化していた。日本が誇るこの2人、シーズンベストで13位と大躍進。今後に期待したい。

アイスダンスは本当に面白かった。世界選手権に相応しいハイレベルな戦いだった。皆、若手。まだしばらく、パフォーマンスを見ることが出来るかと思うと、とても嬉しい。

パトリック・チャン:何故か嫌いにはなれない。ビックマウスな部分はあるだろうが、いい人かも知れない。驚いたような大きなお目目から、そんなことをおもったりする。

普段、男子シングルをさほど見ない父が、エキシビションの演技を一目見るなり、「上手いもんだなぁ。滑らかだねぇ。氷にくっついてるよ。何?チャンていうの?・・」

素人が見ても素晴らしいと感じるチャンのスケーティング。本物だろう。

小塚崇彦:今まで本当に目立たないと言われ、常に三番手扱いだったが、今回は逆転の銀メダル獲得。快挙だ。滑らかなスケーティングは、チャンに負けてはいない。

高橋大輔織田信成から見ると、どうしても地味にうつる。コスチュームも派手ではない。何故、抑えた色にしているかと言えば、小塚の持ち味である滑らかなスケーティングや、ステップを印象つけるため、敢えて地味な色合いにすることで、足元に注目してもらうためだ。

しかし、もはや「世界の小塚」に成長し始めている。そろそろ地味目なコスチュームから脱却しても、良いのではないか。

フリーの演技は、本当に素晴らしかった。今まで“サラブレッドの人”としか覚えてもらえなかった小塚も、これで少しは、一般の人に「小塚崇彦」の名前をフルネームで覚えてもらえるだろう。おそらく・・。

高橋大輔ソチ五輪まで現役を続けることが決まった。震災の影響や靴のアクシデント等、ファンはヤキモキしたかも知れないが、私は「プラス」に捉えていた。ここで終わる大輔ではないと、、。ソチ五輪までというのは嬉しい誤算だが、今季限りで大輔を欠く、というのは、正直なところ今の日本のフィギュアスケート界にとって、かなり痛いと感じていたので、まずはホッとしている。

「不甲斐ない」と感じている方がいらっしゃるかも知れないが、あの靴のアクシデントは、“必然”だろう。勝つ人は何があっても勝つ。「今季で本当に終わるつもりか?」と、悩んでいた大輔の背中を、神様がおしたのだと思う。

“悔しさ”を与えないと、人間、決断出来ない時がある。いつもとは違うことや、何か物事がスムーズにいかない時は、大抵「何か」がある。

“危機回避能力”が高いと自ら公言していた大輔に、神様は敢えてアクシデントを与えられたのだろう。

織田信成:ザヤック・・・決められた数より多くまたジャンプを飛んでしまった・・・何故なんだろうか?同じ過ちを繰り返すのは、、?柔軟性といい、ジャンプの質の高さといい、基礎能力の高さといい、大輔以上のものを持っているだけに、全くもって勿体ない。何かいつも、寸でのところで何かやらかしてしまう“つめのアマさ”を、来季は克服して欲しい。

本当に勿体ない・・・。

フローラン・アモディオ:フリーに“ボーカル”の入った曲が組み込まれていたことで、ちょっとした話題になっているが、違反行為は「減点」されるのが、今回減点されていない。プロトコルを見ていないので分からないが、ジャッジも判断が分かれたのだろう。ボーカルと言えばボーカルだが、ボーカルではない、ラップだと言われたら、ラップだ。

何故、ボーカル入りが競技では使用出来ないか・・・意味の分かる歌詞は厳禁。ジャッジの判断を妨げる場合があるため・・・といった理由からだそうだ。

ただし、高橋大輔ショートプログラム“マンボ”のような、「ウッ」とか「アァッ」等という、“意味のない”言葉はボーカルとみなされないので問題ない。キム・ヨナのフリー“アリラン”の、「アァ〜ウゥ〜エェ〜」も問題ないと思われる。

しかし、アモディオの場合はよく分からない。

フランス国内に向けたメッセージでは、敢えてチャレンジしたとあったようだ。「シングルでもボーカル入りを使えるように」と、改善なり改革を求めたらしい。曲をもっと自由に選択出来るように・・・と、いうことだろうか。

今の規定では、アイスダンスだけは、ボーカル入りを使用出来るが、他は使用不可となっている。

アモディオの訴えも、分からないではないが、何も公式試合でやることはないだろうと思う。また、五輪金メダリストのプルシェンコが「訴え」るのとは違い、アモディオはその点まだ実績がない。一般社会でもそうだが、それなりの実績や成績を残していない人間が、あれやこれや訴えたところで、「聞く耳」は持たれないのが現実だ。ちょっと早まった気がする。

この件が、彼の印象を下げてしまわないことを祈る。

川口悠子スミルノフ組:フリーの青いコスチュームは幻想的なイメージで、曲にとても合っている。素敵なプログラムだ。

エキシビションでは、日本に向けたメッセージを「千と千尋の神隠し」を用い、表現してくれた。この曲がフィギュアスケートに合うなんて!この2人ならではのプログラムだった気がする。安藤の演技同様、涙が出てきた。

川口悠子:「・・頑張ってとは言えない、頑張れない人に、少しでも前を向いてもらえたら」

ありがとう。あなたは、いえ、あなた方は日本にとっても“誇り”だ。

高橋成美マーヴィン・トラン組:ジュニアの域をなかなか超えられないと感じていたが、世界選手権では堂々たる戦いぶりだった。マーヴィンがだんだんカッコよく思えてくる程、高橋とのコンビネーションは日々進化していると思う。

私は身長が低いが、より身長が低い高橋成美を、マーヴィンは上手く支え“華”と魅せる。

日本にとって貴重なペアの選手だ。今度に期待したい。

震災以降、ひとつの記事の文字数をなるべく短めにしていたが(携帯電話で閲覧した場合、5分割以上は長過ぎるからやめようと)、久しぶりに長くなってしまった。

長文に関わらず、ここまでご覧いただき、深く感謝する次第。

やはり、フィギュアスケートは好きであることを、再認識した今大会だった。

真摯に練習に取り組み、試合に臨む選手がいる限り、私が応援していく姿勢は、今後もきっと変わらないでしょう、、。

ありがとう、日本!

ありがとう、選手達!!