銀盤の舞-フィギュアスケートエトセトラ-

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心引き寄せられた男子シングル —全日本選手権大会—

・・・熱かった。激しい戦いだった。テレビ画面を通してさえも、その熱気は充分に伝わってきた。

男子シングル。

番組では女子シングルのショートプログラムの後に、男子シングルのフリーを放映していたが、何故か私は男子シングルに物凄く引き寄せられていたのだった。

「こんなに面白かったのか?男子シングルは・・・。」

全日本選手権大会は、普段はテレビでお目にかかれない選手達がたくさん登場する。フィギュアスケートファンにとっては、たまらない魅力だ。

宇野昌磨・・・14歳になったのか、あんなに小さかったのに。母親のような気持ちになって見守っていたが、そんな心配をよそに、見事な演技を披露した。

何てキレのある動きをする選手なんだろうか?!幼少の頃から注目されていたのは知っているが、ジャンプやスピン、つなぎ等、シニアの先輩方に決して負けていないその精度の高さに、もはや、ため息しか出てこない。

可愛くてたまらない・・・と言ったら失礼だろうか・・・私の母のお気に入り選手に仲間入りした宇野昌磨に私もハートがキュンキュンした(笑)。

田中刑事・・・刑事という名前に、やはり誰しも驚く。我が家族も、「けいじ?えっ?!デカなの?」

刑事ドラマの音楽で演技して欲しい等と戯れ言を申していたが、名前から抱くイメージとは全く違い、彼のスケーティングはとても“優しい”。軽やかな感じを受けた。これにスピードと安定したジャンプが加味されたら、シニアの選手の演技に見慣れている方達にも、心証は良くなるだろうと思う。

小塚崇彦・・・ファンタジー・フォー・ナウシカ、やはりいい曲だ。小塚自身がチョイスしたというが、思いが込められているのだろう。和かな温かい優しい風が、小塚の巧みな足さばきによって、心地よく私を包み込む。

ショートプログラムも斬新でいいとは思うが、私はこちらフリーの方が彼には似合っているように感じる。高橋大輔羽生結弦ではない、小塚崇彦にしか表現出来ない世界感だ。

4回転にチャレンジ、無事成功。アクセルの転倒がかなり悔しい勿体ないところだったが、後半にちょっと込み上げてくるものがあった・・・いい演技だった。攻めの演技に“ありがとう”と言いたい。

高橋大輔・・・3回転倒というのは、久々ではないだろうか?こういう場面を目の当たりにすると、大怪我して復帰したことを、改めて思い出す。ショートがあまりに良すぎたせいか、内容の落差が目立ってしまったが、ショートの貯金で逃げ切った。

私は大輔のファンであるが、選手同様に「納得のいく内容」じゃないと、例え優勝したとしても、手放しではこちらも喜べない。応援する側も、「負けん気」が強いということか・・・(苦笑)。

世界選手権には必ずパトリック・チャンがいるはずだから、ハイレベルな戦いをして欲しい。

町田 樹・・・ステファン・ランビエール振付けのプログラムで華麗に、といきたいところだったが、ジャンプにミスが出た。羽生結弦を応援しながら、内心町田に対して思いがなかったわけではない・・・バンクーバー五輪選考会の鈴木明子中野友加里の時のような・・・正直苦しさがあった。が、勝負の世界ゆえ、仕方がない。惜しかった・・・。いい選手だ。

羽生結弦・・・好き嫌いが分かれるかも知れないが、私は彼を推す(笑)。やはりやってくれた。完璧とはいかなかったが、力のこもった渾身の演技を見せてくれた。

どの選手にも言えることだが、完璧な演技であっても「感動」出来ないことがある。何故なのか今まで分からなかったが、多分文章で言うところの「行間」にあたるものを、演技中に私はキャッチして感動するんだと自分では分析している。

よくも悪くも私はかなり行間を読む。意識的に読む場合もあるが、無意識に行間を感じていることもある。この無意識に感じている時に、理屈ではなく本能的にビビっとくるのだが、羽生結弦の演技には、そういった「ビビっ」とくる瞬間があるのだ。例え完璧でなくとも、大輔や小塚にはない、全身から「表情」を爆発させながら観客を巻き込み、熱のこもった渾身の演技をするこの「行間」にも似た彼の“思い”が、私の本能を直撃して止まない。

悔しそうに何度も両足をひっぱたきながら、目を赤くはらす羽生を見ていたら、私も涙が込み上げてきた。今すぐ抱き締めてあげたくなった。

東北魂は、全国に届いただろうか・・・?

フリーの放映はならなかったが、佐々木彰生のショートプログラムは面白かった。テーマは「忍者」。曲の合間に何度か「シュワッ、シュワッ、」と手裏剣を投げるような刀で切るような音が入っている。私の家族は「何、これ!?面白い」とはしゃいでいた。一般の方も充分楽しめるイキなプログラム。ジャニーズ系にも似た甘いマスクの持ち主だ、心・技・体が整えば相当人気が出そうなんだが・・・。

選手数が多いため、個人的に興味を惹かれた選手のみの記述になったこと、ご了承いただきたい。

世界選手権行きの切符がかかっている大会だっただけに、見ているこちらも緊張してしまうほど、面白い試合だった男子シングル。

フィギュアスケートの基本はスケーティングであると感じる一方で、やはり、スポーツは常に進化し続けていくべきものだと、男子シングルを見ていて改めて実感した。

いい演技をありがとう。