気迫溢れた男子シングル フリー — 世界フィギュアスケート選手権大会2012 —
フランスはニースで開催中のフィギュアスケート世界選手権大会。
男子シングルのフリー演技が、昨夜ライブ中継されたが、お陰で「映画の日」(毎月1日は映画鑑賞料金が、千円になる。)である今日、せっかく映画館に出向こうと予定していたのが、行けなくなったではないか・・・。
何故か?
それは、日本ペア史上初の世界選手権銅メダルの快挙を成し遂げた、高橋成美&マーヴィン・トラン組に続いて、日本男子シングルがこれまた「快挙」を成し遂げてくれたせいなのだ。
興奮と余韻が冷めやらぬのに、映画でまた別の世界に浸ることなど、私には出来ない。いや、勿体ない(笑)。
残念ながら、映画鑑賞はしばらくお預けだ。
番組の構成や編成の仕方、実況、高島彩のインタビューの具合など・・・色々唸りたい部分はあれど、高橋大輔と羽生結弦が表彰台にあがったという素晴らしい快挙で、唸りたいことなどどうでも良くなってしまった。
しかし・・・
高橋大輔のショートプログラムが悔やまれる・・・無理矢理4トゥループジャンプにコンビネーションをつけさえしなければ・・・今回は、パトリック・チャンに勝っていたかも知れないと。
だが、それについては本人が最も反省しているようなので、次はやってくれるだろう。
高橋大輔ファンの私が敢えて言うならば、チャンに勝つには、「ジャンプの加点」をもっともらえるようになればいいのでは?、と思っている。
勿論、4回転の成功率をあげることも大事なのだが、コンパルソリーに秀でているチャンに勝つためには、4回転仕込んだ上で、細かい部分はやはりこちらも「加点」勝負で挑まないと・・・と、地雷を踏むかも知れないが、そう感じている。
今回のフリーにおける大輔のジャンプは、「着氷がつまり気味」なものが多かったので、GOE8.25点中、ジャンプだけの加点数を合計すると、2.74点と少ない。
対するチャンのGOEは14.45点。そのうちジャンプだけの加点は、7.99点。
羽生結弦にいたっては、GOE12.74点のうち、何と8.34点もジャンプだけで加点を稼いでいる。
GOE・・・出来映え点(加点)に関して、複雑な思いをお持ちの方もいらっしゃるとは思う。しかし、チャンの豪快な4トゥループ、4トゥループ — 3トゥループは、見事だ。羽生結弦の存在を知った時から感じていたが、羽生のジャンプも加点がつきやすい美しいジャンプだ。
フリーのプログラムを手直ししたという大輔だが、そのせいだろうか、慎重になったのかいつもよりキレ味が足りない気がした。最後の3フリップが回転不足になった以外は、ミスがないという素晴らしさなんだが・・・。
でも、安定した順位を確保出来るのは、さすが日本のエースだ。
今回、私が嬉しくてたまらないことのひとつに、ブライアン・ジュベールが、見事に復活してくれたことがある。
彼の笑顔がまた見られるなんて、こんなに嬉しいことはない。一般の方には分かりづらいかも知れないが、フィギュアスケートファンには、本当に彼は愛されているのだ。誰しも自分が贔屓にしている選手はいるのだが、それ抜きにして・・・だ。
バンクーバー五輪で惨敗してから、メディアだけではなくファンからも、非難され息を殺すように生活していたというジュベール。だからこそ、五輪後の世界選手権で表彰台が決まった時、あんなに喜びを爆発させていたのだ。
ケガの影響もあったとかで、昨年は参戦予定だった試合を欠場したジュベールだったが、世界選手権で生き返ってくれたことが、私は嬉しくてたまらない。
※ 得点が伸びなかったのは、スピンでレベル判定の取りこぼしが響いている。表彰台に乗せてあげたかったが・・・。
そして、
羽生結弦。
今回私が、最も感動した演技は、羽生結弦の演技だ。確かに、粗削りな部分はまだまだあるけれど、高橋大輔しかり羽生結弦も、得点だけではない観衆を惹き付ける「何か」を持っている稀有な選手だと感じている。
贔屓目と言われるかも知れないが、羽生結弦の「運の強さ」は高橋大輔に負けてはいない。“運”も、勝負師には必要な要素だ。何故なら、ブレジナが、アボットが・・・自滅しなければ羽生結弦が表彰台に上がることはなかった・・・からだ。
しかし、
この人には、フィギュアスケートか何かの「女神」でも味方しているんじゃないかという不思議な感覚すら覚えてしまう・・・それくらいに、「ピュア」なものを感じる。手を差し伸べたくなるような・・・。
氷上では“男”を感じさせたかと思えば、表彰式では17歳の“少年”に戻る・・・ギャップ好きの私には、たまらない魅力だ(笑)。
男子シングルを、こんなにハラハラドキドキしながら応援することが出来たなんて、涙が止まらなかった。
小塚崇彦は、神様に試練を与えられたのかも知れない。あんなミスを犯す選手ではないのに、ミスに沈んでしまったということは・・・。優秀なスケーターだから、試練を乗り越えて欲しい。
熾烈な闘いだったが、「男子シングルって、やっぱり面白い」と感じさせてくれた試合だったと思う。