銀盤の舞-フィギュアスケートエトセトラ-

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町田樹の引退発表-どうしよう、涙が止まらない-

 怒涛の全日本選手権大会が終わった。

 男子シングルは、不調の闇から小塚崇彦が「静かな闘志」をむき出しにして、「小塚ここにあり!」という見事な演技を披露してくれた。普段、彼の正統派な演技を見て、今一つ盛り上がらなかった家族も、今回ばかりは「惹きこまれた」と語っていた。彼の意地がこちらにも伝わってきたのだ。

 そんな小塚崇彦を見て嬉しく思っていた矢先に、突然の町田樹の引退表明…。

 ソチ五輪選考会シーズン、「僕にとっては、五輪に挑戦するのはこれで最後かも知れないので」と、何としても出たい!誰よりも、ソチ五輪に対する思いは強く熱く、視聴者にも伝わってきたことが、つい昨日のことのように思い出される。

 「最初で最後の五輪」…町田は、そう語っていた。

 その頃、私は「もしかして、次のシーズンは引退するのか?」と思っていたから、今シーズンも現役を続けてくれたことが嬉しくて嬉しくて…。何と言っても羽生結弦に対して、「来シーズンはぶっ潰しにいきます」と冗談を言っていたくらいだ。

 だが、今大会ではジュニアの宇野昌摩が、2位に食い込むという大飛躍を遂げた。町田の失敗もあったものの、表彰台を逃した。宇野は2位になったがジュニアのため、世界選手権選考には町田が繰り上がったことになる。この状況が違っていたら、町田が表彰台にあがっていたら、あるいはもう少し「引退」の言葉を聞くのは後になったのだろうか…。

 昨シーズンのショートプログラムエデンの東」、フリー「火の鳥」。町田樹の口から「集大成」という言葉をよく聞いたのも、気になってはいた。いつ頃引退するということをおおよそ自分の中で決めていたのだろうか。

 今シーズンのフリー「第九」…是非とも、その完成を見たかったのだが、それももはや叶わない。

 ファイナルであまりにボロボロだった彼を見て、「何があった?」と感じてはいたが、学業との両立に相当心身が疲弊していたようだ。

 小塚崇彦も、一時期学業との両立に苦しんでいた時期があったが、町田も例外ではなかったということだ。

 今年の3月に埼玉で開催された、世界選手権。そのエキシビションを見てきた際に、他のどの選手よりも私は町田樹の演技が印象に残った。今もあの時の「ゾクゾク」っとした感覚は覚えている。高橋大輔がそこにいるかのような…。物凄いオーラが彼の身体から溢れ出ていたが、あの姿を、もう二度と見られないのかと思うと、切なくて切なくて…。と同時に、行って良かったとつくづく思っている。私が、町田樹を生で見た最初で最後の舞台、それが世界選手権のエキシビション

 高橋大輔に憧れ、同じ大学に進学し大輔の背中を見てきた町田。やっと花開いた町田ワールドも、アイスショーですらもはや見ることが出来ない。現役選手を応援する者にとっては、いつかは覚悟しなければならない「引退」であることは百も承知。しかしながら、いざそれを目の前に突き付けられると、何とも言えない寂しさが襲ってくる。ましてや、その世界から退き、全く畑違いの別の道へいくということは、基本的にはもう姿すら見ることが出来ないということだ。織田信成鈴木明子高橋大輔のように、引退してもアイスショーや解説、テレビ出演などで姿を見ることが出来る…わけじゃない。町田樹は、研究者の道をいくのだ。「氷上の哲学者」である彼らしいと言えばらしいが…。

 その電撃引退発だけではなく、世界選手権等の選手派遣発表さえも、テレビ放送はカットした。というか、枠がすでになくなっていた。確か、昨年は世界選手権等の選手派遣の発表や、織田信成の引退表明までテレビで見た気がするのだが、今年はすっかりカット。なぜだろう?あるいは私の記憶違いだろうか。フジテレビ殿、この大事な瞬間を後日でも放送してはくれないだろうか?

 町田樹までいなくなるのか…ちょっと頭の整理がつかないのだが、いい味を出してくれた町田ワールドには、心より拍手喝さいを贈りたい。

 本当に、素晴らしい選手だ。

 大輔がいない私の心の寂しさを、町田樹の演技が少しずつ埋めようとしてくれていた。「町田語録」これも毎回楽しみだった。

 さよならは言わない。

 本当にありがとう。

 町田樹と言えば、私にとってはやっぱり「エデンの東」。この曲を聴くと、どうしても彼を思わずにはいられない。

 そして、今シーズンのフリー「第九」。この曲を選んだのは、もしかして彼なりの「感謝」の気持ち…だったのだろうか…。

 町田樹を応援出来たことを、心より嬉しく思うと同時に、同じ時代にいられたことに感謝している。

 高橋大輔の背中を見てきた町田も、今じゃ「町田樹」という唯一無二の世界観を表現している。なかなかこういう味が出せる選手もいない。

 この先、研究者という全く違う道に進むというが、願わくば「姿だけでも」いつかどこかで…そういう時がくれば…と、思ってしまう。今度は研究者としての姿を。なんてね…。ファンの戯言だから、どうか気にしないで…。

 本当にありがとう。

 町田樹、まっち~~~~、いつまでも「愛してるよ!!」

 By y-loveやっち。