【銀盤の舞】拝啓 羽生結弦様、阿部コーチ様。
拝啓 羽生結弦 様。
東日本大震災という未曾有の大災害が起き、練習中だった貴方は、スケートリンクがある建物がひび割れる不気味な音を聞きながら、スケート靴にカバーを履かせることすら頭からすっ飛ぶ程、必死に逃げたと聞きました。
自宅も被災し、4日間の避難所生活を経験した後、横浜を仮本拠地としながら、全国のアイスショーに参加する都度、練習もその場で懸命に行っているとか・・・。
震災後は、フィギュアスケートを続けられず、やむなく、師事している阿部コーチの元を離れた生徒さんもおり、今では貴方は唯一の“男子シングル選手”となってしまわれたのですね。
生々しい記憶が、まだ、脳裏から、瞼の裏から、耳元から・・・貴方をなかなか“解放”しては、くれないのでしょう。
弱冠まだ16歳。
多感な年頃に体験した“非日常”は、私達の想像を絶する程、辛くて苦しくて悲しくてせつない、重苦しい毎日ではないかと、お察しします。
「練習に来ないか?」
海外からオファーがきている中、貴方は「地元」仙台に拘り、今のところ日本を離れるつもりはないと。
そんな貴方、羽生結弦が私は好きです。
貴方は東北の誇りです。いえ、日本の誇りです。
私達は、貴方を応援しています。
「うちのリンクを好きなだけ使って!」
そんな台詞を吐くことは出来ないけれど、貴方や貴方の練習仲間を決して見捨てたりはしない。
かと言って、私は何も出来ないし、力もない。
けれど、魂込めて応援し続けます。
だから、
どうか、
フィギュアスケートを止めないで。
羽生結弦のステージは、まだ始まったばかり。
休みたい時は休んでね。
泣きたい時は泣いてね。
心の声を大事にしてあげてね。
震災ストレスなんて言葉では片付けられない程、辛いでしょう・・・気張らないと生きられない、呼吸出来ない・・・そんな状態かも知れない。
でも、
気張らずにいられそうな時間が出来たら、ちょこっとゆるり心を放してあげて。
貴方のスケートを、羽生結弦の世界を、これからも楽しみにしています。
そして・・・、
阿部コーチ 様。
大惨事の最中、練習中だった生徒さんを引き連れ必死に誘導しながら、大切な皆の命を守られたこと・・・涙が出る思いです。
生徒さんが減ったことも、練習出来る環境を求めて、片道6時間かけ旦那様の運転でリンクに向かう日々も、
本当に並大抵の気持ちでは、出来ないことです。
お辛いことと思います。
苦しいことと思います。
この大震災は、暗く重苦しい陰を落としています。
大人ですら、「日々を生きる」ことに精一杯です。
そんな折、阿部コーチや旦那様には、本当に頭が下がります。
折れそうになることがあるかも知れません。
泣きたい時があるかも知れません。
そんな時は、
どうか、泣いてください。
ご自分を甘やかしてあげてください、ほんの一時でも・・・。
何も出来ませんが、心より応援しております。
祈っております。
皆様が、健康で明るくいられます様に・・・。
敬具
※ 関係者の皆様へ
被災に合われた選手や関係者に手を差し伸べることも、ファンには必要なことと心得ます。
リンクを提供するような大きな支援は出来ないものの、「募金」のような小さな支援なら出来るので、メディアを使ってどんどん情報発信してください。
SOS・・・遠慮せず、発信してください。
そして・・・、
この思いが、どうか阿部コーチや生徒の皆さん、関係者、羽生結弦選手等・・・皆さんに届いてくれることを願います。
被災地 岩手県より。