銀盤の舞-フィギュアスケートエトセトラ-

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圧巻のパトリック・チャン、意地を見せた高橋大輔 — 四大陸選手権 男子シングル フリー —

・・・圧巻だった・・・

敵ながらアッパレとは正にこういう時に使う言葉なのだろう。

今シーズン、調子が今一つだったパトリック・チャン。新しいフリーのプログラム「アランフェス」にも、なかなか乗り切れないでいた印象だった昨年から、ようやく魅せてくれた。

※我が家は、地上波におけるテレビ放映での観戦のため、CS放送やインターネットでしか見ることの出来ない試合の印象は加えていない。

アランフェスと言えば、どうしてもプルシェンコのイメージが私には強かった。チャンが演じるにあたり、正直ピンとこなかったのだが、シーズン後半にしてやっと自分のものにしてきたなと感じる程に、昨日のフリー演技は素晴らしいとしか言いようがない。

思わず拍手していた。彼の演技でこうも惹き付けられたのは、正直初めてかも知れない。

コロラドというところは、かつて高橋尚子(マラソン)が練習拠点にしていたことから、マラソン選手が練習しに行く場所という認識があったが、フィギュアスケートの会場に“高地”はどうなのか?と、正直心配をしていたが、慣れている環境というパトリック・チャンには問題はなかったようだ。が、気のせいだろうか、試合後のキス&クライで見た彼の顔には、いつも以上に“汗”が滴っていたように見えた。体力に定評のあるチャンといえども、相当にエネルギーを消耗したのかも知れない。

冒頭に4回転トウループ—3回転トウループのコンビネーションを持ってきた後に、単独の4回転トウループ・・・見事に成功した。

4T—3T:基礎点14.40、4T:基礎点10.30

基礎点だけで既に24.70点稼いでいる。

前半に3つのジャンプ、得点が1.1倍になる後半に5つのジャンプという構成は、高橋大輔も同じだが、前半3つのうち2つに4回転を持ってこられたら、それだけでも基礎点に約10点の開きが出ることもある。

高橋大輔が後半に予定している5つのジャンプは、昨年とは構成を変えてきている。3連続ジャンプは今までプログラムには入れていなかったが、今回は3ルッツ—2トウループ—2ループを持ってきている部分を見ても、今まで以上に勝ちにいったプログラム構成だなと感じた。

スピンやステップ(基礎点のみのコレオステップ以外)が、両者とも“レベル4”だと仮定した場合の基礎点の合計を出してみたが、パトリック・チャンが82.54点(今回81.54点)、高橋大輔が81.67点(今回71.12点)となり、基礎点ではチャンが0.87点上回る計算になる。

両者ともに、甲乙つけがたいプログラム構成だなと、今ごろ実感している私だが(苦笑)。

表現力では引けをとらない大輔ではあるが、ジャンプミスがあり10.15点も基礎点で損をしてしまった。ここに出来栄えのGOEが入り、更に点差が開いたことになるが、今回は私は素直にパトリック・チャンに賛辞を贈りたいと思っている。

いくら慣れている環境とはいえ、酸素濃度が薄い高地において、本番で見事に2度の4回転を決め、最後まで目立ったミスなくまとめてきたチャンを、けなす理由が私には見当たらない。

一方、高橋大輔も意地を魅せてくれたと思う。プログラム構成を変えてきた点もだが、高地に呑まれることなく見事にブルースを演じ切った体力と、両足着氷になったものの4回転トウループに果敢に挑んできたそのアスリート魂に、ありがとうと言わないではいられない。

勿論、今後パトリック・チャンに挑むからには、4回転ジャンプの成功率をあげることは避けられない事実だが、無良崇人、町田 樹の両名がジャンプにかなり振り回されてしまった中、前半2つ目の3アクセルがシングルになった以外に、大きなミスはなかった高橋大輔には、“ありがとう、お疲れ様”と言いたい。

ロス・マイナー、アダム・リッポンを僅差で下して3位に輝いた。彼のショートプログラムも放映して欲しかったが・・・。女子シングルに重点を置かれている地上波では、残念ながら男子シングルはかなりカットされた放映だった。

昨年のNHK杯で、ショートプログラムで上位にいた選手がフリーで崩れ、結果、総合点でロス・マイナーが3位に輝いたのだが、何と嬉しそうにしていたことか!「いい人だろうなぁ」と、何だか人柄まで想像してしまったが、今回もとても嬉しそうに喜んでいた姿を見て、心があらわれるようだった。

スケーティングを見ていても、気持ちが穏やかになってくる。

ロス・マイナー、ふと手を差し伸べたくなる選手だ。

個人的に、デニス・テンにはもっと上位に食い込んできて欲しいと思っている。ジャンプが安定すれば、なかなかいい潜在能力を備えた選手だと思うが・・・。

高橋大輔がキス&クライで呟いた「疲れたぁ」の言葉が印象に残っている。

選手の皆さん、お疲れ様。