銀盤の舞-フィギュアスケートエトセトラ-

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マーヴィン・トランの“帰化問題”に思う

国別対抗戦2012における、日本チーム初優勝を受けて、日本スケート連盟橋本聖子会長は、マーヴィン・トランの日本への帰化について、超党派議員に呼び掛け何とか国会で承認させたい意向だ。ソチ五輪に間に合わせるために・・・。

現在、日本スケート連盟所属のフィギュアスケートペア選手と言えば、高橋成美マーヴィン・トラン組しかいない。日本にとっては、貴重なペア選手であることは間違いない事実だが、先に行われた世界選手権での、日本ペア史上初の表彰台銅メダル獲得、国別対抗戦2012におけるペアショートプログラム首位発信等、高橋成美マーヴィン・トラン組が、「ひょっとしたらソチ五輪でも表彰台を狙える?!」ところまで、力を伸ばしてきたことで、何やら慌ただしく橋本会長は動き始めたように私には見えるのだ。勿論、マーヴィンの帰化について審議や議論するには、「今がチャンス」であることは分かるのだが・・・。

外国人が日本へ帰化するためには、

① 普通帰化

日本に5年以上の在住期間が必要な他、6〜7つの条件が必要とのこと。

② 特別帰化

①の帰化より、条件が幾分緩和される。日本人を配偶者とする場合等に用いられると言う。

③ 大帰化

①や②と違い、国会の承認が得られれば認められる。必要な条件と言えば、日本国への貢献が顕著であることくらいらしい。

そして、この大帰化の場合、外国人が帰化する以前の国籍を棄てなくても問題はないとのこと。(二重国籍OKということか・・・)

ただ、いまだかつて発動した前例はないそうだ。

現状において、マーヴィンが帰化する際に用いられようとしているのは、③の大帰化である。簡単に言えば、日本国籍をプレゼントしようとも言い換えることが出来るのだろう、おそらく。

確かなところは分からないが、マーヴィンにはカナダにガールフレンドがいるらしい。ガールフレンドとは、日本で言う「女友達」なのか「恋人」なのかは、私は知らないが、将来を考えて真面目に交際しているとするならば、より、簡単には国籍変更に気持ちが傾くはずもなく応じられるはずもない。実際、今まで彼は国籍変更に、慎重な姿勢を見せてきていたが、世界選手権での銅メダル獲得や国別対抗戦での健闘から、多少気持ちに変化が起きてきてはいるのかも知れない。

だが、彼自身の言葉で確定的なメッセージはまだ発信されてはいないうちに、どうも日本スケート連盟が、先を急いではいないかと、少し気になっている。

(最も、ソチ五輪に間に合わせようとするならば、動きは遅いくらいなんだが・・・。そういった意味でのスピードではなく、目先の利益だけを追い掛けての、帰化問題にしてはいまいか。それが気になっているのだ。)

五輪が近づく度に、ペアの国籍問題や帰化問題が取り沙汰される。

そのたびにいつも思うのは、「日本でペアを根付かせるのは、本当に無理なのか?」ということだ。

日本でペア選手が育たない要因は、いくつかあるだろう。

① ペア選手が練習出来るスケートリンクがない(少ない)。

② ペア選手を志す男子がいない(少ない)。

③ 日本の教育において、幼い頃からの男女の関わり方を学んでいない(学ぶ機会が少ない)ことによる価値観によるもの。

④ 男女シングルが強くなったことで、日本のメディアは「シングル寄り」になり、海外の優秀なペアスケーターや、アイスダンススケーターをテレビで見る機会が激減したこと。

等があげられるだろうか・・・。

ペアを指導出来るコーチが少ないという声もあるようだが、コーチの数以前の問題だろうと、私は思う。

日本スケート連盟が、どこまで本気でペアを根付かせようと考えているのか分からないが、マーヴィンを帰化させることだけに、心血注がれても正直困る気がしている。

若き1人の青年の将来がかかっているのだ。メダル獲得のためだけに、帰化問題を何とかしようとすることだけは、避けて欲しいと言うのが、私の本音だ。

勿論、本格的に帰化することが承認された場合は、マーヴィンもあらゆる覚悟を携え、日本を背負うことになるはずだが、彼の覚悟を無駄にするようなことにはならないよう、「将来の日本フィギュアスケート界のペア育成」を、真剣に考えることも忘れないで欲しいと、橋本会長には願う。

井上怜奈川口悠子・・・誰も好き好んで日本国籍を外したわけではない。

諸先輩達の歩いてきた道があってこそ、高橋成美マーヴィン・トラン組が存在していると言ってもいいだろう・・・。

先を見据えた“投資”でなければならない。

橋本聖子会長には、是非とも手腕を発揮していただきたい。伊達に国会議員に転身したのでないならば・・・。

そうでなければ、国籍問題に翻弄されるペア選手が気の毒でならない。

今後、頭を悩ませる選手が1人でも少なくなるよう、日本スケート連盟には何とかして欲しいものだと切に願う・・・。