銀盤の舞-フィギュアスケートエトセトラ-

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大輔と明子のタンゴに魅せられて—二人の共通点“情熱とハート”—

エリック・ボンパール杯の地上波放送は、午後16時からとなっている。

試合結果は既に判明したものと思われるが、演技を確認してから、後程触れたい。

先週末、送別会があり「アルゼンチンタンゴ」を聴かせてくれる店に行った。 この店のチョイスは、関係会社の方の個人的な繋がりからであったが、終わってみれば、とても“有意義な”一時を過ごすことが出来た。

岩手県内広しと言えど、「生演奏」でアルゼンチンタンゴを聴かせてくれる店は、ここ一件だけではないのか・・・と言う程、知る人ぞ知る・・・そういう店だ。

主旨は、送別会なのだが・・・結果的には私が一番“気持ちが良かった”かも知れない(笑)。

私「フィギュアスケートが好きなんですけど、昨シーズンは高橋大輔がタンゴをやりまして・・・」

女主人(バイオリニスト)「そうそう、大輔君が、ブエノスアイレスの冬を演じましたね。」

※正確には、高橋大輔が演じた「ブエノスアイレスの冬」は、アストル・ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」と言う作品で、四季を表す四部構成の中の、「冬」と「春」を織り交ぜたもの。「冬」の暗めの音色から大輔のピアソラの世界が始まる。当初、「ブエノスアイレスの冬」と一部メディアで表記されたため、混同されている方もあると思われる。

女主人「では、後程演奏しましょう。」

特別、リクエストをお願いしたわけではないが、音楽に携わる人間は感受性も鋭いのだろう。気がつけば、私が熱心に耳を傾け、心も寄せていた。演奏を始める前に、曲名を紹介するのだが、送別会の中盤からは、女主人の目が、私を見つめてくれるようになった。

低めの暗く重苦しい、淋しげなメロディから始まる。演奏自体は「ブエノスアイレスの冬」のみだったが、出だしから私の脳裏には高橋大輔の舞が甦っていた。

バイオリン、ピアノ、バンドネオン

バンドネオンが演奏出来る人は、全国に十数人・・・数える程しかいないそうだ。ジャバラのような本体の左右に、白いボタンがいくつもついている。普通、楽器というのは、ドの次はレが隣あるいはこの場所・・・と、所定の位置にあるのが、バンドネオンは全く違う。離れた場所にドやレがある上、左右で全く異なる動きをしなければいけないそうで、せっかく習い初めても皆、挫折するらしい。

若手で「小松亮太」と言うバンドネオン奏者がいる。名前は聞いたことある人もいらっしゃると思うが、店の女主人「亮太君が小さい頃は・・・」と話していた。彼は、まっしぐらにのめり込むところがあるようで、だからバンドネオン奏者としてやっていけてるのだろうと話していた。それほど習得するのが大変な楽器だそうだ。

(※小松涼太と表記したが、正しくは小松亮太。)

通の間では、ここは有名な店なのかも知れない・・・そんな思いで、私は聴き入っていた。

タンゴを生演奏で聴いたのは初めてだが、改めて高橋大輔の凄さを感じた。

そばで生音を感じていたが、演奏するだけでも簡単ではない・・・タンゴ特有の“情熱”を表現するには、演奏以外の「力量」も必要になってくる・・・つまりは、「ハート」心だ。

誕生日だというスタッフには、近くまできてエディット・ピアフの「愛の讃歌」も演奏してくれたが、祝ってもらってるわけではない私が、何故か泣いていた。

高橋大輔演技構成点が高いのも、ジャッジに「ハート」が伝わっているのは間違いない。加えて、技術的な要素も関係していると思う。

本人は「演技構成点はあてにならない。技術点を伸ばしたい。」と以前語っていたが、いや、大輔の演技構成点は、技術点と連動した演技構成点である・・・少なくとも、NHK杯の演技ではそう感じた。

あの演技は・・・技術がないと表現出来ないだろう。いくら踊るのが好きでも・・・。

店の女主人は、後半に「リベルタンゴ」を演奏してくれた。これもリクエストはしていないが、リクエストしたかった曲だ。定番と言えばそれまでだが、リクエストしたいと思っていた曲をリクエストせずとも、演奏してくれたことに、嬉しさを隠しきれなかった。

子供のようにはしゃいでいた、私。

リベルタンゴ・・・私が、鈴木明子を応援するきっかけとなった曲であり、プログラムだった。

演奏が始まるや、やはり鈴木明子の舞で私の脳裏はうめつくされていた。

私「高橋大輔が、鈴木明子に“あなたはタンゴが似合うはずだから、やってみたら?”とあっこちゃんに勧めたんですよ。」

上司「そうなのか?!私は、鈴木明子が好きでね・・・。」

高橋大輔

鈴木明子

この二人のスケートは、似ているような気がする瞬間がある・・・。

情熱とハートが熱く漲ったタンゴに、上司も魅せられてしまったようだ。

私のタンゴは高橋大輔から始まり、大輔つながりで鈴木明子ファンになった。

アルゼンチンタンゴには、たまらない魅力がある。

この魅力を気付かせてくれたのは、私にとって、大輔と明子の二人だった。

音楽で満腹になることは出来ないが、人の心を満たすことは出来ると誰かが言ったそうだ。

フィギュアスケートも、人の心を満たすことが出来る、特異なスポーツである・・・と、再認識した先週末の夜だった・・・。