銀盤の舞-フィギュアスケートエトセトラ-

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感受性に揺れ動くひとりの才能 — 安藤美姫 —

今思えば、“ あの光景 ”が、ニコライ・モロゾフ氏の安藤美姫に対する、コーチとしての「別れ」の挨拶となってしまったように、私の目には焼き付いている。

震災により、東京での世界選手権の開催が出来なくなり、舞台はロシアへ移った。

今までにない程の、極上の癒しを魅せた安藤美姫ショートプログラム「ミッション」。

震災でボロボロに壊れかけていた人々の心に、極上の癒しは確実に溶けていったはず、化学反応も拒絶反応も起こさず・・・。

私も、そのひとりだった。

震災で世界選手権開催が遅れたことで、他の選手がモチベーションを崩しかける中、ショート、フリー通しても、今までにない素晴らしい仕上がりだった安藤美姫

優勝後、あれは控え室付近の廊下だっただろうか、あるいは記者達がいる場所だっただろうか・・・記憶が曖昧だが、“ その光景 ”はテレビカメラが確実に捉えていた。

ニコライコーチとの、長い抱擁・・・。

「随分、長いな・・・。」と、テレビを見ながら私は少し首を捻りながら、「もしかして・・・?!」

後だしジャンケンのようで書こうか迷ったが、その光景を見た時、なんとはなしにニコライコーチはこれで、安藤美姫を手放すつもりなんだろうな・・・そう感じられて仕方なかった。

そして、メディアの報道があり、安藤美姫の今シーズンの休養と、来シーズンでの引退(正確には、引退する方向でいきたいという、安藤本人の談話のようだが。)報道に至る。

人一倍、感受性が強く心臓はガラスで覆われているかと思わせる程、「弱さ」ばかりが際立ってしまっている印象がどうしてもあるが、高橋大輔も認める癖のないジャンプは、安藤美姫の最大の持ち味であり武器だとも言える。

周囲が抱く程、弱い人間だと私には思えないのだが、自身の持つ才能をどうせなら、スタンディングオベーションで飾れるような、有終の美を意識して欲しい・・・そう私は願っている。